■第1回 アイルランド音楽とフィドル
●フィドル(Fiddle)とは
アイルランドの伝統音楽の世界では、一般に、バイオリンのことを「フィドル」と呼びます。アイルランド以外でも、世界各地、特にヨーロッパでは、伝統音楽にフィドルがよく使われます。
フィドルの演奏には、地域ごとに、いろいろなスタイルがあります。チューニングも、クラシック・バイオリンのチューニング「(低い方から)GDAE」の他に様々なチューニングのパターンがあります。アイルランドにも、チューニングを変える奏法はありますが、セッションで演奏するような曲は、殆ど「GDAE」のチューニングで弾きます。
アイリッシュ・フィドルで演奏される音楽の中心は、伝統的なダンス音楽(ダンス・チューン)です。
●ダンス・チューン
アイルランドの伝統的なダンス音楽は、ダンスのタイプ(リズム)によって、リール、ホーンパイプ、ジグ、などに区分されます。これらの曲は、元々、ダンスの伴奏として演奏されてきました。ダンスの伴奏を専門にするバンドは「ケーリー・バンド(Ceili
Band)」と呼ばれ、アイルランド各地に、歴史あるケーリー・バンドが存在しています。
一方で、近年は、音楽だけで独立して演奏されることも多くなりました。パブのセッションで演奏される曲も、大半はダンス・チューンです。ダンス・チューンの1曲1曲は短いのですが、セッションなどでは、普通、1曲を数回繰り返して、流れを損ねないように違う曲に変えていき、数曲をメドレーにして演奏します。基本的に、ダンスの伴奏の形を継承しているのです。
●アイルランド音楽の地域性
アイルランドは、北海道と同じ位の面積の小さな国です。でも、その中に、地域性豊かな音楽があります。アイルランド音楽の地域性を分類するのに、演奏スタイル、曲のレパートリー、よく演奏される楽器などの傾向からみて、4つの地域のスタイルがよく取りあげられます。南から、シュリーヴ・ルークラ(コーク州とケリー州にまたがる山岳地域)、クレア、スライゴー、ドニゴールです。
フィドルは、どの地域でも多くの人に弾かれています。その分、地域性を比較しやすいのではないかと思います。
ただ、だんだん世界が狭くなり、演奏家どうしの交流が盛んになったり、名人の演奏が録音によって広まったりして、地域性以外の要素も強くなっています。また、一方で、失われそうな地域性を取り戻そうという動きもあったりで、今は、本当にいろいろなアイリッシュ・フィドルの演奏を聴くことができ、興味が尽きません。(2002年11月14日)